VOICES FROM THE SEA リリース

9月23日、Zeiva Incの新作”Voices from the Sea”が公開されました。現在、公式サイトにて無償版をプレイ可能です。

本作のあらすじは、学校では同級生と馴染めず、家庭では母親と対立する13歳の少年 Cantus が、海辺で不思議な少女 Maris との出会い、彼女との7日間の交流を通じて徐々に心を開いていくというものです。本作の大部分は、Cantus と Maris のほとんど雑談といってもいいような会話で占められており、作中、何か大きな事件が起こることはありません。やることといえば、砂の城を作ったり、貝殻を拾ったりするくらいです。唯一の謎といえば、Maris の正体くらいですが、これは序盤で明らかにされる情報だけで推測できます。また、内気な少年と突然現れた少女という構図はそう珍しくありませんし、それに加えて、常識外れの純粋無垢な少女という Maris の造形は少しばかり紋切り型です。

しかしながら、つまらないゲームだというわけではありません。思うに、本作の見所は、物語の筋にではなく、むしろその間の過程にあります。一見すると無意味な二人の交流ですが、よく注目してみると、 Cantus の心境に関しては一貫して丁寧に描かれていることが分かります。特に1日の終わり際の場面、毎回 Maris との会話で始まり、Cantusの独白で閉じられるこのシーンには、なかなかの工夫がこらされています。ただこれらも、全体を通して見た場合は、やはり没個性的であることは否定できません。

厳しく書いてきましたが、Zeiva ファンとしては擁護しておかなければならない点もあります。これまで Zeiva Inc がリリースしてきたゲームは、いずれも物語、プロット重視で、こういうタイプのシナリオを出してくるのは、私の知る限り今回が初めてです。それを踏まえると、これはなかなか侮れない内容です。

シナリオ以外に目を向けても、本作はこれまでのZeiva Inc のゲームに比べるとやや異質です。定番だったミニゲームは登場しませんし、ルート分岐も一切ありません(エンディングも1つです)。開発資金を Kickstarter で集めたり、フルボイスを導入したりといったこともそうです。正確なところは開発者自身だけが知ることでしょうが、やはり本作は挑戦的な性質が強い作品であるのかもしれません。


○有償版の情報
本作にはウェブサイトで公開されている無償版とは別に約5ドルで購入できる有償版があります。
主な追加要素は以下の二つです。

1.音声
ほぼフルボイスです。
2.おまけシナリオ
メインシナリオをクリアすると、外伝的なストーリーが2つ追加されます。一つは本編の後日談、もう一つは本編とは全く関係のない、漫画やアニメ、ゲームに関するメタネタを含むコメディです。

○音声について

本作の有償版は、英語圏の日本風ゲームにしては珍しくフルボイスですが、これに関しては留意すべき点が一つあります。各々のキャラクターを演じているのは、発売の数ヶ月前に、Zeiva Inc がネット上で催したオーディションで選ばれた人々だということです。そのため、キャラクターごとの演技の腕前や音質にはかなりの差があります。特に音質の違いは大きく、あるキャラクターの音声は澄んでいますが、その一方、またあるキャラクターの声には、986円で売られていたマイクで録音したのではないかと思えるようなノイズが混ざっています。

私としては、せっかくプレイするのであれば音声付きをお勧めしたいです。同一文の音声を使いまわしていたり、特定の部分だけ(バグか仕様か)音声が出なかったりするのですが、質や演技力の差も含め、一見(一聴)する価値はあります。

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