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ロストカラーズの紹介と感想 Advanced Novelの体験

  • 2011-09-24 (土) 8:00
  • 雑記

私はノベルゲームやアドベンチャーゲームがあまり得意ではない。

嫌いじゃない。好きなタイトルはいくつもある。
けれども落ち着きのない性格のためか、文章を読むことが長続きしないのだ。
そんなこともあって、選ぶのは変わったシステムのものか、さもなければミニゲームが付いているものばかりだった。

ある時、ANOSと呼ばれる変わったゲームシリーズの事を耳にした。
それは時間や記憶を管理することで活路を開く、能動的に行動しなくてはならないノベルだという。
どこかYU-NOやP17nを連想し、興味を持った私はシリーズのうちの一つを試すことにした。

lostcolors title

ということで今回のゲームはANOSシリーズの3番目、色の無い世界を描いた”ロストカラーズ”だ。
開発は自転車創業。
レーザーディスクゲームの移植販売をしたり、X68000に関する活動を行っていたりする、ちょっと妙なゲームメーカーである。

注意:この記事にはそこそこのネタバレがあります。
中盤以降の謎解きやストーリーには触れないようにしましたが、空っぽの頭で遊びたい人は回避を。

○システムの紹介

いわゆるサウンドノベルだが、一般的なそれとはちょっと異なっている。
大雑把に説明すると以下のような感じだ。

主人公は時間を操作できる道具を持っており、プレイヤーはそれを任意で使用できる。
(バックログで読み返しをするとその分だけゲームが巻き戻る)
ただ、副作用として記憶も巻き戻ってしまうため、これだけでは役に立たない。

この法則が適応されない存在はただ一人。ゲームの世界と切り離されたプレイヤーのみ。
ただしプレイヤーが主人公にしてやれることは、物語の各所で手に入る「記憶」のキーワードを思い出させることだけ。
(もちろん、選択肢を決める等の基本的なことは出来る)

作中、主人公は何度も困難に陥り、同じ時間と状況をやり直すことになる。
しかしどんなに記憶が移ろいでも、彼はプレイヤーが記憶させたキーワードを覚えている。
これをうまく利用すれば、無限の繰り返しを打ち破ることができるのだ。

(実のところ、この説明はかなり間違っているが、雰囲気が伝われば嬉しい!)

lostcolors e.g.

簡単な例を一つ上げよう!

目的の遺跡にたどり着いた主人公。
しかしその建物は水没しており、内部に進入することはできない。
行き詰った!
しかしプレイヤーはここで「建物が沈んでいる」というキーワードを入手する。

そこで探索に出かける前まで時間を巻き戻し、主人公に先のキーワードを記憶させる。
すると彼はその「沈んだ建物」に関する記憶を元に、別な行動を取り始める・・・
諸々あって、プレイヤーは問題解決に繋がる新たなキーワードを獲得する。

再び主人公を遺跡に向かわせる。
前回の記憶は消えてしまっているので、このままでは前と同じ展開だ。

しかし、ここで先ほど得た、答えとなるキーワードを主人公に記憶させる!
すると彼は何かを思いつき、それを元に現状を打開することができた。
やった!時間の廻りを打ち破ったのだ!

○システムの感想

という風にストーリーのあちこちでは無数の障害が立ちはだかってくる。
障害と言っても一目で分かるパズルとは限らない。
それは、状況、罠、あるいは単なる会話としてストーリーに潜んでいる。

これは難しい。
あらゆる情報に目をこらし、それについて考えた上でキーワードを選ばなければ先には進めない。

最も面白かったのは主人公とプレイヤーの立場が明らかに違うことだ。
何せ、全ての成り行きを覚えられるプレイヤーと違い、彼らはすぐに物事を忘れてしまう!
謎が解けたとして、それを主人公にどう教えるか。

lost colors map

答えに直結するキーワードを与えても主人公は閃いてくれない。
彼の状況を考えて、順序良く教えてやらなければならないのだ。
思うに、プレイヤーの役割は主人公の分身ではなく、助言者、あるいは背後霊に近い。

また、ゲームの進行すると共に、プレイヤーの武器であるキーワード自体がある種の障害となっていく。

所持するキーワードが少ないうちはその使い方で迷うことはない。最悪総当たりでもなんとかなる。
しかしその数が増えるにつれて、情報が入り乱れ、プレイヤーはどれがどれかを把握できなくなっていく。

つまり、情報(=記憶)が多くなりすぎたせいで頭が混乱してしまうわけだ。
記憶が安定しない主人公を傍から見ていたはずのプレイヤーは、いつしか登場人物たちと同じ苦境に立たされていく。
ゲームに没頭させる面白い仕組みである。

○ストーリーの話
舞台となる世界には生き物にも草木にも色が無い。
数年前に色を媒体とする病が流行り、それを防ぐために展開された魔法の結界によって失われてしまったのだ。
人々は最早そのことに馴染み、稀に現れる感染者―カラーズ―を犠牲にしつつ、それぞれの生活を送っていた。

lost colors talk

主人公はそのカラーズを滅菌(討伐)することを生業としている男性である。
だがあくる日、突然の事件により彼自身がカラーズとなってしまう。

窮地に陥った彼を救ったのは王国の皇女。
混乱する男に彼女はこう告げる。
結界の外―色の付いた世界―に封じられた3つの結晶片があれば、彼の色を元に戻せると・・・

○ストーリーの感想
簡単に言い換えると、多数派から少数派に転げ落ちた男が苦難の道を歩く物語である。
真剣なテーマだが描写は全体的に控えめであり、それほど重くはない。
これはゲームとのバランスを取った結果なのかもしれない。
例えるならゲーム性はうどんであり、ストーリーはつゆということだろうか。

しかしストーリーが物足りないとは思わなかった。むしろ素晴らしいものに感じた。
何故かというと・・・

冒頭の、カラーズになる前の主人公は、敵対者であれば子供でも惨たらしく殺す男だった。
伝染病を防ぐために働いているという事情を差し引いても、いけ好かない奴である。

けれども、謎を解くには主人公の立場になって考えなくてはならない。
男を支援し、共に達成感を噛み締めるにつれて、私は徐々にそいつを認められるようになった。

奇妙な親しみを覚えながらゲームを進めていった。
そして全てが終わったとき、何故だかは分からないが、他人事ではない安堵と寂しさを感じた。

lost colors the protagonist

これが普通のノベルゲームのストーリーであったとしても、私は感傷を受けていただろう。
だが彼を哀れに思い、その運命に本気で共感したことは、
プレイヤーと主人公を結びつけたこのシステム無くして有り得なかったに違いない。

○あれこれ

終盤のストーリーが唐突で、それまでとの差に少し驚いてしまった。
ネタバレになってしまうので具体的には書かないが、ただ、話の終わりとしては良かったのだが、
ゲームの最後としてはちょっと消化不良だったのだ。(あの戦いには介入したかった)

当初、セーブが一つしかないことが不便に見えたが、いくらでもやり直しが効くと分かってからは納得できたし
何より「時間は辿れるが究極のやり直しは無理」というルールを表す一つの演出のようで面白かった。

しかし肝心の記憶操作やバックログの操作性は少し・・・いやかなり悪かった。
ただ、これは次回作で改善されたようだ。

○最後に
ここしばらく、私は距離を取って物語を楽しむことに慣れてしまっていたのかもしれない。
だがこのゲームは私を話に夢中させ、そうすることの楽しさを思いださせてくれた。

確かに能動的に動かなくてはならないゲームだった。
頭を使わせるだけでなく、物語への集中を助けるゲームシステムはすごい。

クリアまでにかかった時間は10時間前後と、この手のゲームにしては短めだったが、
名残惜しくはあっても、短すぎるとは思えない内容の密度だった。

もっとこのシステムを遊んでみたい、ほかの作品もやってみたい。
そして、ノベルゲームにはまだ何かすごいものが隠されている・・・そう思わされた一作だった。


○外部リンク
自転車創業

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